第2世代の角層細胞計測プログラム コルネオサイトメトリーSGのリリースについて

2023年10月3日
株式会社CIEL


はじめに

 角層解析は、肌の状態を評価する有用な手段の一つです。当社開発の角層解析ソフトウェアであるコルネオサイトメトリーは、角層解析の客観的な評価を支援するツールとして、2014年に発売を開始しました。9年間に国内外の研究機関や企業(2023年9月現在33件)に導入いただきご活用いただいております。
 このたび、滋賀県立大学、新潟エスラボ株式会社、株式会社CIELの3者による共同研究の成果として、角層画像の自動計測機能とメラニン解析機能を備えたコルネオサイトメトリーSG※を開発いたしました。これにより、これまで評価者が多くの時間を費やしていた画像解析作業の負担が大幅に軽減され、さらに、新たにメラニン染色をした角層の自動計測機能が追加されたことで、角層画像を用いた幅広い解析に対応できるようになりました。角層のメラニン染色画像の解析は、これまで多くの場合、習熟した評価者の目視によるグレード判定が用いられており、判定基準の統一が難しく客観性が必ずしも高くないという課題がありました。新ソフトウェアの画像解析技術によるメラニン計測は、客観的な評価に役立つと考えられます。
※ 新ソフトウェアは、第2世代(Second Generation)の角層細胞計測プログラムとなることへの期待を込めて、コルネオサイトメトリーSGと名付けました。


リニューアルのポイント

 既存のコルネオサイトメトリー(コルネオサイトメトリー2)には、ユーザーが指定した角層細胞の細胞面積を測定し、それを集計する機能、ユーザーが指定した多重剝離領域の割合を計測する機能、ユーザーが指定した閾値の範囲にある領域の平均蛍光強度を計測する機能がありました。 今回開発したコルネオサイトメトリーSGでは、それらの機能に加えて、以下の主要な3つの機能を追加しました。
① 角層細胞の面積と多重剥離度の自動計測
② 蛍光染色画像の自動計測
③ メラニン染色画像の自動計測



 これらの自動計測機能は、解析中に評価者の作業を必要とせず、解析開始から結果の算出までを自動化します。
 角層細胞面積の算出には、深層学習(deep learning)による計測アルゴリズムを使用し、評価者は計測対象の角層細胞をマウス操作によって指定する必要がありません。また多重剥離領域を深層学習により自動的に推定する機能1)が追加されており、客観的な多重剥離度の判定を支援します。



 蛍光染色画像の自動計測は、平均蛍光強度の算出の妨げとなる多重剥離領域2)を深層学習により自動的に推定して除外し、多重剥離領域を除いた角層細胞領域の平均輝度を算出します。
 メラニン染色画像の自動計測は、フォンタナマッソン(以下FM)染色をした角層画像から、指定したサイズの黒色粒状物の数を自動でカウントする機能と、角層細胞領域を自動的に判別する機能3)により、単位細胞面積に含まれる粒状物の数を算出できます。これにより、評価者の習熟度に左右されずに客観的にFM染色画像を評価することが可能となります。




自動計測をブラックボックスとしないための機能

 コルネオサイトメトリーSGでは、角層画像解析の多くの作業を自動化することにより、作業者の負担を大幅に軽減しながら、計測値の的確さをユーザーが画像上で確認できる機能を備えています。
 自動計測結果は、自動画像解析によって検出された領域を示す画像ファイルとともに出力されます。そのため、不的確な画像認識が含まれていた場合には、それらを除外して再計測することができます。このように、コルネオサイトメトリーSGは画像解析の自動化による利便性と、結果の的確性のダブルチェック機能により、ユーザーの試験目的に合わせた利用が可能なソフトウェアです。


計測の流れ

 コルネオサイトメトリーSGでは、各計測メニューにおいて自動解析対象の角層細胞画像またはフォルダを選択することで自動計測を開始し、計測処理はバックグラウンドで行われます。解析が完了したら、複数の画像ファイルの結果をまとめた集計データを作成できます。出力された計測結果と画像をソフトウェアに表示して確認をし、必要に応じて、修正や再解析をすることができます。 また、従来のコルネオサイトメトリー2と同様の手動操作による計測も可能です。


細胞面積・多重剥離計測

 ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット(BG)染色をはじめとした、角層細胞の形態観察を目的とした染色画像を用いて、細胞形態の数値化が可能です。細胞面積、細胞の形の整い方(真円度)、また画像中の総角層細胞面積当たりの多重剥離部分を多重度(%)として算出できます。細胞面積は読込まれたスケールの情報をもとに角層細胞の平均細胞面積(µm2)として算出されます。
 細胞面積計測では、細胞面積が計測された数百から数千の角層細胞を、各細胞面積が紐づいた形でソフトウェアの画像上に表示できます。そのため、不的確な画像認識が含まれていた場合には、それらを除外して再計測することができます。 多重剥離度計測では、自動計測の完了とともに多重剥離領域を示す画像ファイルが作成されることから、ユーザーはファイルを確認することで、多重剥離領域の的確性を確認することができます。



蛍光画像計測

 ターゲット物質に特異的な蛍光物質で標識した細胞画像を用いて、ターゲット物質の細胞中の存在頻度を全細胞面積当たりの平均蛍光輝度として算出します。
 コルネオサイトメトリーSGでは、自動的に角層の蛍光画像を、単層の角層領域、多重領域、背景領域の3つの領域に分割し、単層の角層領域の平均蛍光輝度を算出することで、角層試料の多重度に影響を受けずに平均蛍光輝度を自動で算出することができます。

 蛍光画像計測では、自動計測の完了とともに多重剥離領域を除外した解析対象画像が作成されることから、ユーザーはファイルを確認することで、多重剥離領域として除外された領域の的確性を確認することができます。


メラニン計測

 角層のメラニン計測は、FM染色により可視化された黒色粒状物の個数と細胞面積を自動的に計測し、単位細胞面積当たりの粒状物の個数を算出します。黒色粒状物は、カウントするサイズを画像上の大きさ(pixel数)によって指定することができるため、ユーザーの試験目的に合わせた解析が可能となります。
 メラニン計測では、自動計測の完了とともにカウントされた粒状物を緑色で表示した画像と、自動検出された細胞領域を示す白黒画像が作成されます。これらの画像ファイルを確認することにより、自動検出された粒状物と細胞領域の的確性を確認することができます。


まとめ

 コルネオサイトメトリーSGは、角層細胞の各種計測を自動化し、さらに従来は困難であったメラニン染色画像の客観的な評価を、角層細胞中の粒状物の自動計測により可能としました。角層の研究者や評価者の負担を大幅に軽減しながら、角層細胞の各パラメーターを客観的に計測できる角層解析支援ツールとなることが期待されます。


引用文献

1) 深層学習を用いたBG染色画像からの角層診断システムの提案 安田蓮、榎本洸一郎、水谷多恵子、岡野由利、 田中武則、酒井道動的画像処理実利用化ワークショップDIA2023 415-422 2023年3月
2) Novel sensitive method on evaluation of carbonylated protein in the stratum corneum. Taeko MIZUTANI, Toshiyuki MIZUTANI, Chiho IMAMURA, Yuri OKANO, Hitoshi MASAKI 日本香粧品学会誌41(2), 1–5 (2017)
3) メラニン染色画像を用いた肌の状態評価システムの提案 長谷川柊人、榎本洸一郎、水谷多恵子、岡野由利、田中武則、酒井道 ビジョン技術の実用化ワークショップViEW2022 89-95 2022年12月



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